連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・73
人は成長する存在だと信じる心
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.378-379
発行日 2010年4月25日
Published Date 2010/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101645
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指導に聞く耳を持たないジューリン
乳腺炎が悪化し,一部だけが自然排膿したジューリンの乳房は変形し大きく腫れ上がっていた。ドロンと流れ出る膿は乳汁に混じって悪臭がする。当然熱も高く,痛みも激しいはずなのだが,市販の解熱鎮痛剤を大量に飲んでいるので,局部以外に熱はない。ただ,動くと痛み,悪寒が来るのだという。乳房は少しの動作にも動かないように,三角巾・オムツ・タオルなどで固定されていた。病状は重く,気分が悪く食事もできなくなったらしい。3週間前の受診時とは違ってげっそりとやせていた。がちがちになっている乳房に触れると,ジューリンの低い悲鳴が上がる。よくここまで我慢したものだ。同時に,こうなるまで自分を甘やかした生活をよくも続けたものだとあきれもした。
切開を入れて排膿させたほうが断然治りも早いし,確実だ。しかし,ジューリンが望んでいるのは安易に飲める抗生物質だった。根治までにはかなりの長い期間抗生物質が必要になる。薬を買い続けるだけの経済力は彼女にはない。
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