特別寄稿
小さな子どもにあたたかい心を育む―シルクロード・ランニング・ジャーニーを通じて
仁志田 博司
1,2
1東京女子医科大学
2町田市民病院周産期センター
pp.34-40
発行日 2009年1月25日
Published Date 2009/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101361
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なぜ「あたたかい心を育む」ことが重要か
私は,周産期医療に携わった35年の母と子の臨床から,「人生のスタートの時期にいかに優しく育まれるかがその子の一生の心の基礎をかたち作る」ことを経験的に学んできた。それは,単に虐められた子どもが虐めるようなり,愛された子どもが人を愛するようになるというレベルを越えたものである。近年の脳科学の進歩によって,乳幼児期の養育環境が高次脳機能と心の発達に大きく関与することが明らかにされつつある。
また,新生児医療の進歩により,極めて未熟な新生児の多くが脳性麻痺などの明らかな障害を持つことなく生存するようになったが,そのような児が就学年齢に達すると,集団での共同生活がうまく行なえず,学習障害や行動異常が認められることが知られるようになった。そのような児は,視力・聴力・運動機能などに問題がないばかりでなく,知能指数もほぼ正常であるところから,他人とのコミュニケーションに不可欠な相手の気持ちや心を読み取る高次脳機能に問題があると考えられている。
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