特別寄稿
自然なお産をめざして―のぼり病院の1年の軌跡
山下 ひとみ
1
,
峯苫 やよい
1
,
野辺 祐代
1
,
西 千晶
1
1産科婦人科のぼり病院
pp.42-48
発行日 2009年1月25日
Published Date 2009/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101362
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はじめに
私たち4人は,銀河鉄道を走る夜汽車に乗っていました。窓の外は星がキラキラと瞬き宮沢賢治の言うイーハトーブ(理想郷)をめざし夜汽車は走り続けていました。ときは紫陽花の花が満開の2007年7月のことでした。めざす終着駅は「自然なお産駅」です。
当院は5年前のお産1,000例にくらべると少子化に伴い減少はあるものの,57年の歴史をもつ産婦人科病院です。最近は産科医不足が社会問題となっていますが,当院も2名の医師でお産を行なっており,典型的な医師不足の病院の仲間入りができそうな施設です。今や,わが国では産科医療の集約化が起こり小さなクリニックは淘汰されそうな危機的時代を迎えています。でも,相変わらず日本のお産は約半数がクリニックで行なわれているのが実情です。クリニックなくして日本のお産はあり得ません。
当院はクリニックよりはずっと規模が大きな病院ですが単科であり,NICUはありませんので現実にはクリニックの仲間といったほうがよい40床の病院で,総勢90名あまりのスタッフのなかに22名の助産師が勤務しております。その助産師のなかから自然なお産をしたい,という切実な声がわきあがってきました。これまでは医師が主になり支えてきた病院ですが,時代の風を感じ,未来を予測し,お産をされる方に望まれる施設として生き残るためには,医師中心で押し進めてきたこれまでのお産のあり方を見直さなければならない時代にきていたのです。
「自然なお産」にかけた当院の再生への幕はこうして開かれました。
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