連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・33
安定や経済よりも大切なこと
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.1096-1097
発行日 2006年12月1日
Published Date 2006/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100907
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子どもはみんなの子ども
途上国では,老人も障害を持つ人も赤ちゃんもすべて一緒くたに暮らしている。普段から彼らがどういう特性を持つ人かを肌で感じて生きている。だから,あらゆる場面で適切な支援の手が当たり前のこととして差し伸べられる。たとえば赤ちゃんを連れていれば,どこでも人が親しげに話しかけて子どもと遊んでくれるし,バスや電車の席はどんな満員でも絶対に譲ってもらえる。子どもが泣こうが駄々をこねようが,そこで文句を言う人や冷たい視線を飛ばす人は皆無だ。泣いている赤ちゃんがいれば,誰でも心配になってしまうのがこの国の人々なのだ。
子育ては多くの人が手伝うので,母親1人で子どもを育てている家はない。また子ども自身,多くの大人の保護下で社会性を学び暮らしているので,家族以外の大人の言うことにも大抵従う。近所のオバサンにお使いを頼まれている風景は日常だ。大人と子どもは家族でなくとも明らかに上下関係なのだ。この前提があるからこそ,大人は子どもが外で危ないことをしていれば叱り,注意することができるのだと思う。
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