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はじめに
私は精神科の「小児・思春期」専門外来で,長らく思春期の若者たちを主に診ています。しかし,乳幼児期の子育てが変わらなければ,思春期の問題も本質的には解決しないと考えています。そして1995年に,親と専門職でつくる子育て支援のボランティア団体「こころの子育てインターねっと関西」(URL:http://www9.big.or.jp/kokoro-i/)を仕事仲間や地域でグループ子育てを実践している母親たちと一緒に立ち上げました。私はあまり意識していませんでしたが,「エンゼルプラン」が始まった年は,ちょうど「こころの子育てインターねっと関西」が生まれた年にあたります。そのため,私は国の子育て支援策の動向を子育て現場から,母親の視線をとおして,ずっと見続けてきました1~3)。
ボランティア活動をとおしてすばらしい子育て支援活動をしている多くの助産師とも出会いました。子どもの出生にかかわる“助産師さんならでは”の重要な役割があることを実感しています。本稿が助産師さんの子育て支援活動に何かお役に立てれば,うれしいです。
かつて私は,現在「大阪レポート」4,5)と呼ばれている,1980年生まれの子どもたちを対象とした大規模な子育て実態調査の集計・分析を担当しました。この種の調査は多いのですが,科学的検討に耐えるデータは意外と少ないようで,平成15年版の「厚生労働白書」にも育児不安の項では「大阪レポート」のデータが使用されています。今回私たちは,厚生労働科学研究として,「大阪レポート」に匹敵する調査を実施することができました。この調査をここでは「兵庫レポート」と呼ぶことにします。本稿では,2003年の「兵庫レポート」と1980年の「大阪レポート」の結果を比較検討します。ほんの20数年間に子育て現場の状況は驚くほど様変わりしていました。そこから浮かび上がった,今ほんとうに必要な子育て支援とは何か,次世代育成のために何をしなければならないのか,について述べます。そして,助産師さんへの期待も述べさせていただきたいと思います。
なお,回答者の99%が母親であったため,分析では母親の現状という形で報告します。
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