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はじめに
「今日の母親クラス,2時間ずっと坐ったまま。ドクターや栄養士さんなどが次から次にあらわれて,一方的に話しをするだけ。私たち,ただ聞くだけ。頭のなかいっぱいで,疲れたわ」。
こんな感想を漏らしている参加者がいるかも知れません。出産や育児などについての知識を共有することは大切なこと。でも共有の仕方,伝え方が適切でなかったり,また,情報量が多過ぎたりしたら,折角の大切なものが活かされません。これはもったいない。
そこで母親クラスの持ち方を工夫し,がんばって「参加型」でやってみたとします。すると今度は,別の声が聞こえてきます。
「今日の母親クラスは参加型で面白かった。ジャンケンゲームなんかもあって,す~っごく楽しかった。でも,なんだか次から次にプログラムがあって,目まぐるしかった。ところで,今日のクラスの目的と内容はなんだったっけ?」。
楽しいことは大切です。悪いことではありません。いやむしろ,面白い,楽しいということは,母親クラスで助産師さんと参加者との間になんらかの対話的関係や信頼関係ができている,ということです。これを抜きにしては教育や学習は成り立ちません。でも,参加者を楽しませるために参加型の技法を追い求め過ぎると,今度は弊害がでてきます。マニュアルに沿って次から次へと手を変え品を変える。すると,楽しさは残るけど,クラス本来の目的が薄められてしまうことが起きます。
では,どうしたらいいのでしょうか。そもそも「参加型」とはなんなのか。なぜ「参加型」が必要なのか。以下,私の約30年にわたるアジア,アフリカ,ラテンアメリカでのNGO経験をもとに,私が理解する「参加型学習」,その原点,意味,必要とする理由をひも解いていこうと思います。
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