連載 症候学メモ・48
「失調」を見直す
平山 惠造
1
1千葉大学神経内科
pp.53
発行日 1989年1月1日
Published Date 1989/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206239
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◆ある先生から電話があった。「小脳失調という言葉はありますかねェ」ということである。これはどう考えてもおかしいが,しばしばこういう言いまわしを見聞きする。矢張り「小脳性運動失調」が正しいし,またこうでなくてはならない。小脳失調でよいということになれば,後索失調とか前頭葉失調という言葉も認めなくてはならなくなる。前頭葉失調と聞けば,一般には,前頭葉の機能障害と考えるのが当然で,誰が前頭葉病変によって生じる運動失調を考えるであろうか。後索失調にしても,沢山ある後索の機能のうち,深部感覚が障害されたために生じた運動失調を指しているとは,この言葉からはとても表出されない。
◆つまり,失調という言葉がもともと運動失調の省略語であるならこの言葉は成り立つが,それはとても無理な話である。医学用語の中には自律神経失調という大変やっかいな言葉もある。いうまでもなくこの失調が運動失調を意味するものではない。自律神経系の機能障害という意味で使われていることが多い。
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