特集 骨盤位外回転術
米国産科婦人科学会(ACOG)の勧告
竹内 正人
1
,
進 純郎
1
1日本赤十字社葛飾赤十字産院
pp.565-571
発行日 2003年7月1日
Published Date 2003/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100554
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はじめに
2001年12月,ACOG(American College of Obstetrics and Gynecology:米国産科婦人科学会)は,「正期産骨盤位分娩では経腟分娩を試みることなく予定帝王切開にするべきである」との勧告を出した1)。この勧告は,先にLancetで報告された,Hannahら2)の26か国,121センターで施行されたRCT(randomized control trial)の結果に基づく。
正期産単胎骨盤位に対しての帝王切開率が急速に上昇した1980年代,ACOGはその風潮を戒めるかのごとく「正期産単殿位では帝王切開,経腟分娩のいずれの分娩様式も容認でき,現時点ではどちらが良いかを判断することはできない」との見解を示し,産む女性の意思も尊重したうえで,ケースバイケースで分娩様式を選択するべきであるという勧告を出した3)。ところが,移り変わる時代背景と訴訟社会への移行が進む中,RCTによるEvidenceをもって出された今回の勧告は,遂に来るべき時が来てしまったのかという感が強い。
日本においても,少子化が進み,産む消費者にとっては児の完全性を強く希望するようになり,医療過誤に対しては厳しい審判が下される時代となった。残念ではあるが,あえて,医療者がそのリスクをとり,骨盤位経腟分娩が試みられることはなくなっていくものと推察される。
本稿では,ACOGの勧告と,その根拠になった研究,勧告が出された経緯,その反響などについて解説する。
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