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はじめに
現在,「少子化」「育児ストレス」「虐待」などが解決すべき社会問題としてとらえられつつあり,一般的に育児や子育てに関して社会の関心が大変高まっているといえる。
近年,地域社会における対人関係が希薄化し,核家族化が進行したにもかかわらず,人々の価値観は男性・女性の性別役割分業意識が根強く,母親が孤立無援状態で育児に専念している現状にある1)。しかし,子育てに関連する価値観は多様化しており,育児を取り巻く環境も変化しつづけ,地域・社会の変化からも多くの影響を受けている2)。
母親の育児不安・ストレスが最も高い時期は1歳以降であると報告されている3)。特に1歳6か月児の子どもを持つ母親の約6割が不安やイライラの気持ちを抱えている2)とされている。
母親の育児不安やストレスに関する研究が多くなされているが4,5),それらによると父親の育児への協力度,父親の協力に対する母親の満足度や夫婦の話し合いの頻度などが,母親の育児不安やストレスに影響しているという結果が出ており,多くの論者は父親の理解・育児への協力の必要性を述べている6)。
また最近取り組まれるようになった父親研究によると,父親の育児行動への参加は,子どもの社会性の発達などに重要な影響を与え,母親の満足感や育児不安の軽減をもたらすとしている7)。
看護の現場では,これからの育児は夫婦で行なうように,親となる夫婦に対して育児指導を行なうようになってきている。私たち看護職が父親・母親の性役割観を考慮しながら,父親へ具体的な行動をサジェスチョンすることは大切であり,夫婦間に生じる行動のずれを少なくするように援助することが必要である7)と提言されている。
父親と母親における性役割分業観の違いが,父親の家事育児行動と母親の期待(母親から見た父親の家事育児行動)との間にずれを生じさせ,母親の満足感に関連しているものと推測し,今回,それらの関連について調査に取り組んだ。
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