連載 生殖補助医療 “技術”がもたらした現実と未来⑥
出生した子の親子関係
石井 美智子
1
1東京都立大学法学部
pp.169-172
発行日 2003年2月1日
Published Date 2003/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100473
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はじめに
人工授精や体外受精等の生殖補助医療が発達したことによって,昔であれば子をもてなかった夫婦が子をもつことができるようになった。卵巣を摘出してしまった女性も卵子をもらって産む(提供卵子体外受精)こと,他人の夫婦の受精卵をもらって産む(提供胚体外受精)ことができる。今や,若い女性の卵子をもらえば,閉経後の女性も子を産むことができる。精子や卵子の提供によって夫婦の枠を越えるだけではなく,精子や卵子等の凍結保存によって年月・世代も越えて,表のような多様な生殖が可能になっている。それは,子を欲しながら子をもてない不妊の夫婦にとっては,福音であるかもしれない。けれども,できることはすべて行なってもよいとはいえないだろう。
生殖補助医療はどこまで許されるのかは,難しい問題である。倫理的問題とは別に,生まれた子の親は誰なのかという問題も生じている。アメリカでは,提供胚・借り腹の事件で,「生まれた子は誰の子でもない」という衝撃的な判決もあった。誰が親かわからないということは,子の福祉に反する。生殖補助医療にあたっては,生まれる子の福祉を第一に考えるべきである。本稿では,生殖補助医療によって生まれた子の親子関係について考えてみたい1)。
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