活動報告
医師会および企業との協働・協力体制下で実現した脳の健康度測定(認知症検診)事業—脳の健康に関心を持つきっかけに、認知症を自分事に
幣原 清美
1
1文京区福祉部高齢福祉課
pp.52-57
発行日 2024年2月10日
Published Date 2024/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664202025
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はじめに
■文京区高齢者の状況
東京都文京区は、人口が22万6653人、高齢者人口は4万3517人で、高齢化率は19.2%(2021〔令和3〕年4月1日現在)である(図1)。65歳以上の独居世帯は1万2574世帯、夫婦世帯は7514世帯となっており、1990(平成2)年から2015(平成27)年までに独居世帯で2.74倍、夫婦世帯で1.49倍となっている。
■認知症高齢者支援の現状と課題
文京区の地域包括支援センターへの認知症に係る相談件数は、年間3000件を超える。特に独居の認知症高齢者の生活課題は深刻なものが多い。屋根が壊れ、玄関からはハクビシンが出入りする家や、居室には物が山積みとなり、玄関の上り框が居住スペースとなっている家など、過酷な環境の中で生活し、周囲の区民から近所の困った人として相談が寄せられ事例化する独居の認知症高齢者もいる。その相談趣旨は、「何とかしてほしい」というものであるが、年数をかけて生活課題が深刻化した現状にスピード感を持って対応することは難しい。
こうした相談など、超高齢社会・独居高齢者の増加を背景とした地域や個別の課題に向き合う中、認知機能の変化が認められる壮年期から自分自身の脳の健康について考える機会があると良いのではないか、認知機能低下自覚後の早期の段階から医療機関や相談機関につながることができれば、生活課題が深刻化する前に医療や支援につながることができるのではないかと考えた。
以降、2019(令和元)年より検討を重ね、2020(令和2)年に認知症診断後支援事業を先行的に事業化し、2021年に認知症検診事業を実現した活動経過を報告する(表1)。
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