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はじめに
新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の拡大および行動制限の要請等により、行動変容に伴うストレス等、COVID-19が精神面に及ぼす影響は大きい1)。特に精神障害者は、環境の変化に対する不安等を感じやすい2)ため、COVID-19による影響を受けやすいと考える。
COVID-19の影響を受け、精神障害者のデイケアでは大勢で集まるプログラムは実施困難な状況にあり3)、従来とは異なる運営への混乱や不満感が生じている可能性がある。また、精神障害者の中には、感染への不安から社会復帰施設への通所を中断する者もいるが4)、多くの精神障害者は、社会復帰施設に通所することで生活リズムを整えている5)ため、生活への影響が生じている可能性も考えられる。これらのことから、COVID-19による地域で暮らす精神障害者(以下、在宅精神障害者)への影響を具体的に明らかにする必要がある。
一方、在宅精神障害者を支える支援者の状況としては、COVID-19の影響で生活リズムが乱れないように支援しているという報告はある6)ものの、COVID-19の影響を受けた在宅精神障害者への具体的な支援内容は示されていない。相談支援事業所の相談支援専門員は、日頃から在宅精神障害者を身近で支援し、生活全般の状況を捉えている7)ため、COVID-19による在宅精神障害者への影響をより良く把握していると考えられる。そこで、本研究は相談支援事業所の相談支援専門員が捉えている、COVID-19による在宅精神障害者への影響と支援について明らかにすることを目的とした。
在宅精神障害者への支援において、相談支援専門員と保健師との連携は必須であり、情報共有しながら協働することが求められる8)。とりわけ相談支援専門員は、在宅精神障害者の気持ちや想いを聴き、寄り添う支援を行っているため8)、相談支援専門員が捉えているCOVID-19による在宅精神障害者への影響と支援から保健師が学ぶことは多く、保健師が相談支援専門員と協働してCOVID-19の影響を受けた在宅精神障害者を支援する上で、示唆を得ることができると考える。
なお、本研究における「在宅精神障害者」とは、自宅だけでなく共同生活援助(グループホーム)等の施設で暮らす精神障害者も含む。また、「支援」とは、直接的な支援のみならず、状況変化を捉えることや、支援を調整することも含む。
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