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はじめに
浦安市は千葉県の北西部に位置し,かつて漁業で栄えていた町である。1971(昭和46)年の漁業権全面放棄を機に海面埋立事業を経て面積が4倍に拡大した。その後,大規模住宅開発が進み,都心への通勤に便利なベッドタウンとして発展を遂げた。2020(令和2)年4月1日現在の人口は17万978人,そのうち65歳以上の高齢者数は2万9902人(高齢化率17.5%)である1)。高齢者の約6割が前期高齢者であり,今後,急激に高齢化が進むことが予測されている。
筆者らは,2015(平成27)年度より都市部の健康な高齢者および高齢者を支援する専門職を対象に,死への準備行動に関連する活動について調査する中で,アドバンス・ケア・プランニング(以下,ACP)を課題として考えるようになった。ACPとは,将来自分の意思決定能力が低下した際に備えて事前に望む医療とケアについて話し合うプロセス全体である2)。その効果は,関係者間のコミュニケーションの機会が多くあることで促進され,より積極的な個人や社会的コミットメントが必要とされている3)。このような中,市民へのACP普及に向けた議論がさらに求められるようになった。
同時期に,浦安市において在宅医療・介護連携推進事業を通して,保健医療福祉の専門職が課題の共有をしつつ地域包括ケアシステムのさらなる充実を図っていくこととなった。2018(平成30)年3月には,厚生労働省より人生の最終段階における医療・ケアの普及・啓発の在り方に関する報告書4)が出され,人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインの改訂5)も行われ,より積極的に地域住民を対象とした支援をする必要性が提示された。
これらを踏まえて浦安市は,在宅医療・介護連携推進事業の一環として,2018年度より市民への在宅医療と介護を支える仕組みの理解促進とACPの普及啓発を行うこととした。本稿では,市の保健師が中心となり地域の多職種を巻き込みながらそれらを行った経緯と,ACP市民講座の実際を報告する。
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