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はじめに
健診を終えた親子に,スタッフが声を掛ける。「今日は〇〇ちゃんに絵本を読ませてもらいますね。お母さんもどうぞ一緒に楽しんでいってください」。スタッフが絵本を読むと,赤ちゃんは読み手の顔をじっと見つめたり,手足をばたばたさせたりと,一人ひとり,その子なりの方法で個性豊かに応えてくれる。そんな赤ちゃんのかわいらしい様子に,保護者も次第に和らいだ表情になっていく。最後に,地域の子育て支援情報とともに絵本をプレゼントする——。
ブックスタートは,乳児健診などの機会に,読みきかせの体験と共に赤ちゃんに絵本をプレゼントする自治体の事業だ。その自治体に誕生した「すべての赤ちゃん」を対象とすること,そして単に絵本を渡すだけでなく「体験と絵本をセット」で届けることが大切にされている。母子保健や子育て支援担当課,図書館などの自治体の各部署や市民ボランティアの連携のもと,現在,全国の約6割の自治体で実施されている(2018年12月末現在NPOブックスタート*調べ)。
「ブックスタート」という言葉の響きから,本や読書に関する事業だと思われがちだが,実はこの事業を母子保健から切り離して考えることは難しい。母子保健担当課が事業に関わることにより,事業そのものが充実するのと同時に,要支援の親子へのフォローなど,母子保健の中でかねてより重視されてきた課題の解決にもつながっている。ブックスタート事業は,さまざまな立場の人が関わる中で,子育て支援,市民協働,まちづくりなど,多方面からその可能性が見出されているが,本稿では「母子保健」における可能性や意義に焦点を当てて紹介したい。
2001年に自治体の事業として始まったブックスタート。対象はその地域に生まれた「すべて」の赤ちゃんだ。乳児健診等の機会に,行政と市民が連携しながら,絵本を開く楽しい「体験」と「絵本」をセットでプレゼントする本事業は,現在,全国の約6割の自治体に広がっている。
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