連載 保健師のための行政学入門・7
予算なしで事業を企画できるのか?
吉岡 京子
1
1東京医科大学医学部看護学科地域看護学
pp.622-626
発行日 2015年7月10日
Published Date 2015/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664200215
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0円事業は本当にありえるか?
一昔前,保健師の中には「予算はつかなかったけど,何とか事業化したのよ」と話す方が少なからずいた。また,大学院生のときに読んだ雑誌の記事でも「予算を取らずに事業できた」という話をいくつか見た記憶がある。
ところが,実際に行政で働いてみると,0円事業はありえないというのが実感である。どんな事業にも必ず予算がついていた。私が働いていた組織では,事業の企画の担当者が起案文書を作成することになっていた。このため,新人の私も先輩の作成した起案書をお手本として,それらしい形になるように何とか体裁を整えて作文していた。いざ起案書を作成してみると,事業の目的,対象者,実施方法,周知方法だけでなく,通称「予算書」と呼ばれる各課のもつ予算について細かく定められた書類にもとづいて,区分や金額の単価,必要な件数を1つずつ入力することになっていた。記載の仕方にもきちんと順序があり,お手本に則って記載するのが原則である。つまり,起案者は,好むと好まざるにかかわらず,自分の起案している事業の予算の源や位置づけを認識せざるをえない仕組みになっているのである。
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