連載 ナカイタ発 保健師へのつぶやき・19
事例検討―映し出される物語を引き受ける
中板 育美
1
1日本看護協会
pp.65
発行日 2015年1月10日
Published Date 2015/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664200084
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10月号の本欄で,人材育成としての事例検討会についてお伝えさせていただきました。事例検討は,対象となる事例(家族)が描いてきたストーリーを「理解したい」というわれわれ援助者のやや前のめりな感覚を,段階的につなぎ,かつ重層的に,そして冷静に精緻化させていくプロセスを支えるものです。したがって,それは冗長的な事例検討ではなく,むしろ論理的思考のプロセスであり,随所でなされる判断,つまり“アセスメント”が大変重要になります。
小さな子どもが犠牲になる虐待死が後を絶ちません。私事ですが,身近でこの現実を知ったとき,「この家族の歪みはどこから」「各々の人生が背負う葛藤は」「その葛藤は引き継がれるのか」「なぜ,救えないのか」と疑問だらけになり,そして「この子は,一度でも愛情たっぷりに抱きしめられ,子どもらしく笑った体験をしただろうか」と,1人の子を救うことすらできない負い目に押しつぶされそうになりました。不甲斐なさを少しでも拭えるならと,虐待死亡事例の検証にはできる限り参画してきました。そこで認識したことが,援助者のアセスメントの弱さでした。
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