連載 健康課題としての放射線防護 保健師による実際的な活動モデルに向けて・7
保健師と放射線防護専門家・公衆衛生看護研究者との協働実践―精神保健事業におけるミニ講座の取り組みを通して考えること
小林 真朝
1
,
菊地 透
2
1聖路加国際大学看護学部
2自治医科大学RIセンター
pp.1014-1017
発行日 2014年11月10日
Published Date 2014/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664200025
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はじめに
東日本大震災における地震や原発事故の影響により,住民は長期間にわたって複合的なストレスを受ける状況となっている。とくに,目に見えず,理解しづらい「放射線」への不安を抱えながら生活を送ることは,多くの人々に先の見えないストレスを与えている。
災害による生活環境の変化や,経済的影響,風評被害などにより,住民にとって安全と安心は一体とは言えなくなっている。低レベル放射線の影響下において,自治体や専門家は,科学的に「安全である」ことについてこれまでも住民へ丁寧に説明を行ってきているが,それが住民が「安心できる」ことにつながるまでには,まだ時間を要し,課題が残されていると言えよう。
私たちは,原子力災害復旧期に住民とともに放射線防護文化を形成していくためのアクションリサーチのプロジェクトに,低レベル放射線の影響下にある自治体の保健師と,放射線防護および公衆衛生看護の実践家・研究者との協働で取り組んでいる。このプロジェクトはいくつかの実践活動を展開しており,連載の第5回・第6回では,母子保健事業および高齢者保健事業における協働実践について報告をした。今号ではその中から,既存の精神保健事業に組み込んで実施した放射線に関する協働実践の概要と課題を述べる。
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