医療の周辺 物理学・3
放射線計測と防護
尾内 能夫
1
1癌研究所物理部
pp.684-685
発行日 1981年8月1日
Published Date 1981/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207537
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放射線が癌の治療及び診断に用いられていることを述べてきたが,その放射線が癌を作ったり,火傷を起こしたりすることも分かっている.X線が発見されてから5年後の1900年にはX線による世界最初の犠牲者がでている.彼は皮膚癌で死亡しているが,1896年から4年間X線透視を見世物としていたというから相当の放射線量を被曝していたに相違ない.また,Raが発見されてから7年後の1905年にはRaによる世界最初の犠牲者がでている.彼は火傷で死亡しているが,ウラニウムからの放射能を発見したBecquerelも,Raをポケットにしまい忘れて胸部に火傷を起こしている.このように放射線の危険性については早くから分かっていたので,放射線を過度に照射しないために放射線量を正確に測定する方法の研究や放射線から身体を守るための放射線の遮蔽方法の研究,またどの程度の放射線被曝によって,どういう障害が現れるかといった研究が,放射線物理学者,放射線生物学者,放射線医学者によって実施され,そのデータに基づいて放射線計測と放射線防護の方法が国際的組織でまとめられ,報告されている.
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