研究
女性高齢者がボランティアを実施する中での思い―肯定的要因と否定的要因に着目して
板井 麻衣
1
,
齋藤 尚子
2
,
中山 久子
2
,
櫻井 しのぶ
2
1江戸川区葛西健康サポートセンター
2順天堂大学医療看護学部
pp.878-887
発行日 2014年10月10日
Published Date 2014/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664200009
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■要旨
本研究は,高齢者がボランティアを実施する中での思いについて,肯定的要因と否定的要因の側面から明らかにすることを目的とした。無償のボランティアを実施している65歳以上の女性8名に半構造化面接を実施し,質的帰納的に分析した。
その結果,肯定的要因として【貢献できている実感】【活動を遂行できる自信】【自身への利益】【他者との良い交流】【活動以外での楽しみ】【継続を容易にするサポート体制】の6カテゴリが,否定的要因として【他者から承認されない活動】【活動に対する不全感】【対象者へのネガティブな感情】【仲間の喪失による悲嘆】【メンバー間の気遣い】【活動に付随する面倒】【活動を困難にする自身の変化】【活動を休む際に発生する負担】の8カテゴリが,それぞれ抽出された。
肯定的要因と否定的要因で抽出されたカテゴリは表裏一体の関係にあるものが多く,その内容は活動そのものと活動以外のものに分けられた。
以上より,保健師が高齢者ボランティアと協働する際には,実際の活動をイメージできる養成講座の開催や,高齢者の適性を考慮した活動の紹介,高齢者が感じる負担を軽減する活動システムへの助言,活動中には振り返る場の設定や実践に見合った講座の開催等も有効と考える。さらに,体調や家族の状況など活動以外の面にも目を向けていく必要がある。現時点で困難が生じていなければよいというわけではなく,保健師は否定的要因に対して予防的に支援し,否定的要因を少しでも肯定的にとらえられるようにする必要がある。
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