連載 町で暮らし人と出会う・36【最終回】
すみれ派宣言―縮小社会をめざして
森 まゆみ
pp.1044-1045
発行日 2013年12月10日
Published Date 2013/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664102305
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昨年,『千駄木の漱石』(筑摩書房)を上梓した。漱石の文学や足跡を調べるのも面白かったが,一番気になったのが「すみれほどな小さき人に生まれたし」という漱石の句だ。
日本人は背が小さいのを気にし,家が狭いのを気にするが,すみれほどの小さな体に生まれたら,あまり目立たず,静かに,場所塞ぎもせず,エネルギーも使わずに暮らしていけるのではないか。そういえば漱石も150cm足らず。「懐手をして小さく世を渡りたい」とも言っている。文学博士号も辞退し,時の権力者山県有朋の誘いも「ほととぎす厠なかばに出かねたり」と断る。いい生き方だと思う。
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