研究
在宅高齢者生活機能向上ツールを用いた予防型家庭訪問―家庭訪問の意義と今後の課題
鵜川 重和
1
,
池野 多美子
2
,
川畑 智子
3
,
湯浅 資之
4
1北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野
2北海道大学環境健康科学研究教育センター
3秋田大学男女共同参画推進室
4順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学講座
pp.1118-1123
発行日 2011年12月10日
Published Date 2011/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101760
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■要旨
背景:廃用症候群を原因とする要介護者の急増が社会的問題となっているが,在宅において個別に生活機能の改善を促すことを目的とした研究報告はほとんど認めない。筆者らは,在宅高齢者生活機能向上ツール(FIT)を開発し家庭訪問を実践した。本報告では,FITを用いた家庭訪問の方法と家庭訪問の意義に関して報告する。
対象と方法:特定高齢者選定用基本チェックリスト,および軽度要介護認定者から選ばれた65歳以上の在宅高齢者を対象とした。研究参加の同意を得た125名に対して月1回,3か月間で計3回,1回あたり約1時間のFITを用いた家庭訪問を実施した。家庭訪問では,FITの実施に加えて要望により生活や健康相談に応じた。FITは,日々の生活を振り返ることで,高齢者が楽しいことや大切だと思うことに気づき,高齢者自身が生活目標を再設定する機会を提供するためのツールである。これにより,身体・認知・精神機能や活動,参加を促すことで生活を活性化し,廃用症候群を予防する。3回目の家庭訪問終了後に感想と要望を尋ねるアンケートを実施した。
結果:アンケートに回答した94名のうち,約2割がFITを難しいと回答した。生活そのものの変化では,計算や書字など具体的な作業や「自信をもった」との回答も認めた。
結論:筆者らは,すでにFITによる認知機能改善効果を報告している。本結果はFITが容易に作成できるという利便性だけでなく,高齢者の生活改善もあわせもつ有用なツールとなる可能性を示唆した。
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