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はじめに
要介護認定者が年々増加しているなか,2006(平成18)年4月に介護保険制度改革が実施された。新たに地域支援事業,新予防給付制度がそう設され,65歳以上の要支援・要介護状態になるおそれの高い状態にあるものを特定高齢者とした地域支援事業が展開されてきた1,2)。しかし2010(平成22)年8月,その地域支援事業実施要綱が改正され,地域支援事業は市町村に委ねられる部分も多くなり,市町村は独自でさまざまな方策を模索しながら,より住民のニーズに合った介護予防施策を展開しなければならなくなったといえる3)。
長期的に安定した介護予防事業を推進するためには,介護予防事業評価を行い,施策の意思決定の根拠とする必要がある。国は,実施者である市町村が介護予防事業の評価を行い,事業の見直しを行う必要があるとしている。そのためには介護予防事業評価指標が必要である。
また,介護保険制度の安定化のため,地域包括ケアシステムの普及推進へ向けて準備が進められている4)。地域包括ケアシステムとは,個々人のニーズに応じて,医療・介護などのさまざまなサービスが適切に提供できるような地域での体制とされている5)。つまり,地域の資源を利活用し,地域でできることは地域でスピーディに行うというものである。
国では,このシステム構築の前提として,地域に居住する高齢者のニーズを的確に把握し,介護保険事業計画を策定する必要があるとしている。そのため,国は第5期介護保険事業(支援)計画の策定へ向けて,各地方自治体は2010年度より国が作成した「日常生活圏域ニーズ調査」を行い,地域の高齢者のニーズを的確に把握することを推奨している4)。
これらの流れを鑑みても,介護予防事業評価を行い,根拠にもとづいた施策の意思決定を行い,介護予防事業を推進していかなければならないことは明らかであり,普及に向けた評価指標の開発と実用化は必須と考えられる。
そこで,茨城県では,2009(平成21)年度より茨城県独自の介護予防事業評価システムを構築すべく,15名で構成された茨城県介護予防推進委員会(以下,推進委員会)において,介護予防事業評価票および介護予防事業評価プログラムの開発を進めてきた(表1)。推進委員会では,まず国がweb上で示した「総合的介護予防システムについてのマニュアル」6)に着目し,科学的根拠が示されているこのマニュアルに準拠しながらも,茨城県のめざす介護予防事業評価票および介護予防事業評価プログラムの方向性を明確にしたうえで,開発に取り組んできた。
本稿では,茨城県版介護予防事業評価票および茨城県版介護予防事業評価プログラム(以下,評価プログラム)の開発のプロセス,実用化と普及に向けた活動,および今後の方向性について報告する。
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