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■要旨
隠岐郡島前地区3町村のIターン(都市部から出身地以外の地方への移住)者で,2005,2006年の2年間で保健所の精神保健相談事業を利用した12名のケース記録から,健康課題が生じた背景と支援上の課題を明らかにし,精神保健上の健康課題をもつIターン者への支援のあり方を考察することを目的とした。個別ケース記録から,分析項目であるIターンの動機,Iターン前後の生活実態,健康課題が生じてから支援までの経緯,支援後の課題に関連するデータを抜き出し,健康課題が生じた背景要因と支援上の課題として共通性のある特徴をとらえてカテゴリー化した。分析の結果,健康課題が生じた背景要因として,【Iターン以前から抱えている問題】【理想と現実のギャップ】【家庭内トラブル】【環境不適応】【経済苦】の5つのカテゴリーが抽出され,支援上の課題として,【問題の重症化】【支援の輪が広がらない】【本当の健康問題が見えにくい】【生活の立て直しが困難】の4つのカテゴリーに分類できた。
一番の課題は,本人・家族が限界まで問題を抱え込み,相談が遅れることである。Iターン前やIターン直後の保健医療福祉に関する情報提供の徹底と継続的な相談窓口の設置が必要と考えられる。保健師としては,地区の健康相談や地区活動等を通して,Iターン者の生活実態を知り,健康課題があれば早期に支援につなげることが大事である。また,Iターン者と地域住民とのパートナーシップの形成のために,健康づくり活動においても,Iターン者が住みやすい地域づくりの視点を盛り込むことができると考える。さらに,妻が心の準備ができないまま望まぬ来島をし,抑うつや不安を呈したケースがみられたため,女性への配慮がより一層求められる。
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