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はじめに
今日の医療現場は,診断方法や治療技術の著しい進歩により,業務遂行形態の分業化が大きく進んでいる。こうした医療環境のなかで近年,医療事故や院内感染が数多く報告されていることは衆知の事実である。そのため,医療事故対策と院内感染対策は,今日の保健所業務としての「病院立ち入り検査」においても重要な項目となってきた。
病院立ち入り検査は,医療法および関連法令により,対象病院が規定された人員の確保と構造設備を有し,かつ適正な管理を行っていることを検査・確認し,そして必要な場合は指導することが目的である1)。
昭和23年に制定された医療法25条第1項の規定にもとづき2),機関委任事務として実施されてきたが,その後地方分権一括法の施行により平成12年4月から自治事務とされた。
平成13年度立ち入り検査実施にあたっての留意事項として,国は医療事故防止と院内感染防止対策を示した。その理由は先に述べた通りであるが,さらに地域保健法に位置付けられている保健所の機能としての,すべての住民のための良い医療の確保があげられていることによる。保健所における「病院立ち入り検査」業務は,このような理由から,従来の人員の確保と構造物の点検を中心とした業務から,医療内容とその方法にまで一歩踏み込んだ調査が必要とされてきた3)。
当保健所ではこれまでは,立ち入り検査に保健師は関与していなかった。しかし,保健師業務は地域住民の健康的生活環境の整備とともに,安全な医療と看護の提供がうけられるような環境整備を図る役割もあることから4),今回当保健所でも保健師が立ち入り検査に参加することになった。保健師の立場から考察したその役割と今後の課題について報告する。
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