連載 意思決定の統計学・5
統計解析の信頼性
松原 望
1
1上智大学外国語学部国際関係副専攻(社会統計学)
pp.1124-1128
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100597
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最近,データの捏造で消費者の信頼を損ねたり重大事故につながったりで,社会問題になる事件が多い。温泉に水道水や入浴剤を用い実体のない表示をしていたケース,原子力発電所の冷却系統のパイプが蒸気漏れ事故を起こし死者まで出たが,そのパイプの肉厚データが捏造されていたケースなどなど。業績向上をめざすのは企業の常で,このこと自体はとやかくいわないとしても,このように行き過ぎた結果としてデータが捏造されることも少なくないだろう。程度の差はあれ,データ捏造はわからないところで相当広く行われている疑いが強い。
「捏造」といってもまったく架空の数字を当てはめることは悪質だが,むしろ,都合のいいデータだけを取ったり表示したりするケースでは,一概に悪と決めつけられずなかなか判定が難しいものもある。たとえば,筆者が「あさま3号事件」とよぶケースは,JRの東京―長野の新幹線が79分で目的地に到着,と切符売場横に表示するものだが,実はこれは最速のもの1本のみ。他の「あさま」には90分以上のものもある。誤認した一利用者がこれに抗議,JRと争いになったが,広告倫理の裁定機構に持ち込まれ,広告の許容範囲内との決着になった。
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