特集 懸賞論文結果発表
エッセイ部門 テーマ:私のB面
大賞
父との約束
塩川 智代
1
1名古屋市環境局公害対策部公害保健課
pp.755-756
発行日 2004年8月1日
Published Date 2004/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100539
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「自分で楽しむだけでなく,人のためになるんだったらやってもいい」というのが,フルートを始めるにあたっての父との約束だった。テレビで聴いたフルートの柔らかい音色に魅せられ,4歳から習っていたピアノをやめてフルートを始めたい,と父に頼んだ中学1年生の春。何事も途中で投げ出すことを許さない父が言ったのが冒頭の言葉であった。中学校に入学してすぐにブラスバンド部に入部し,先輩からフルートの手ほどきを受け,無我夢中で吹き続けた。
高校はもちろんブラスバンド部のあるところを第一条件に選び,フルート三昧であった。フルートを始めて3~4年たった頃,父が主催する会合で一曲吹いてくれと頼まれた。いい加減なことを許さない父の性格から,覚悟を決め必死に練習した。アンデス地方の民謡「コンドルは飛んでいく」を演奏して,父の大切な会合に花を添えることができたことは大きな自信となった。いまでも私にとって思い出深い大切な一曲である。
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