連載 看護教育・徒然なるまま・7
父の入院
佐藤 紀子
1
1東京女子医科大学看護学部
pp.147
発行日 2001年2月25日
Published Date 2001/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902455
- 有料閲覧
- 文献概要
私事ですが,昨年父が入院し,家族の立場で看護を考える機会があった.父は74歳.10年前に脳梗塞の発作で倒れ,以後右半身麻痺・失語症という後遺症を抱え,母の介護を受けながらリハビリに励んでいた.病気になる前は,理論派で読書と囲碁を趣味としており,お酒もたばこも充分過ぎるほど嗜み,どちらかと言うと豪放磊落な人であった.
発病後最初の数年,父は家に閉じこもりがちで,家族からの働きかけにも暗い表情をしていることが多かった.しかしその後,同じ病気を持つ方たちとの交流や言語療法の先生との出会いがあり,その先生の薦めで絵を描き始め,「おはよう」「ありがとう」といくつかの言葉も笑顔で話せるようになっていた.運動機能を維持すべく,私なら5分もかからない散歩コースを1時間以上かけて毎日歩いていた.最近では,加齢の影響もあったのだろう,段々歩くことが不自由になり,入院する一月ほど前からは車椅子での生活になってしまっていた.しかし父は父らしく暮らしていた.母の介護を受けながら,毎日起きるとラジオ体操をし,昔から覚えている歌を大きな声で歌い,着替えをし,食事をし,日記を書き,新聞に目を通し,絵を描いていた.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.