連載 『保健婦雑誌』52年の軌跡から・8
保健婦の地域精神衛生活動の歩みを振り返る―保健婦が当時悩んでいたこと
松本 弘子
1
1東京慈恵会医科大学医学部看護学科
pp.296-301
発行日 2004年3月1日
Published Date 2004/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100473
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はじめに
平成14年度から,精神障害者に関するサービスの窓口の一部が市町村に移管され,私の周囲からは「まだ何も手付かずだよ」「どうしたらいいのか,まだよくわからない」などの声をよく耳にする。これまでいろいろ手がけてきた仕事とともに,新しいことを始めることはエネルギーのいることであるが,時代や社会の変容とともに活動の場を広げてきた保健婦の歴史のなかでは繰り返されてきたことともいえる。
そこで今回は,精神衛生法改正に伴い,地域精神衛生活動の第一線機関として保健所が位置づけられた1965年から,精神保健法が制定された1987年までの『保健婦雑誌』のうち,精神障害者に関するいくつかの座談会の記事を眺めながら,当時の保健婦が何に悩み,どのように乗り越えていったのかということについて時代背景とともに振り返ってみたいと思う。これから本格的に活動をはじめようとしている市町村保健婦の方々の,少しでも参考になれば幸いである。
まず座談会を振り返る前に,当時のある1人の保健婦の切実な悩みを紹介したい。
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