連載 「健康格差社会」への処方箋・5
歴史に学ぶ―科学は理論・仮説に始まる
近藤 克則
1
1日本福祉大学社会福祉学部
pp.152-158
発行日 2007年2月10日
Published Date 2007/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100411
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
本連載の目的は,「『健康格差社会』への処方箋」を示すことである。処方箋を切るべき病態「(社会経済的階層間に)健康格差があること」と,「社会経済的因子が健康に影響を及ぼす機序(しくみ)」については,かなり明確に実証されている。その証拠にWHOが,副題にthe solid facts(確固たる事実)とまでつけて「健康の社会的決定要因」と題するレポートを出している1)。
社会経済的因子が健康に影響を及ぼしているのが確かならば,大元の社会経済的因子を変えるべきだと考える立場もある。しかし,「社会環境に介入することで,そこに暮らす人々の健康状態は改善できる」とは限らない。そこまでは,まだ十分に実証されてはいない。ならば「実証されてもいない理論・仮説にもとづいて政策を練ることなどバカバカしい」という立場もあり得る。果たして,どちらの立場を取るべきなのであろうか。
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.