連載 手をつないで歩こう・3
ほおずき市
渡辺 真琴
pp.506-511
発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100377
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姉さんが僕の携帯に電話をよこしたのは,もうすぐ日付が変わろうとしている時刻だった。大学の生物化学工学科で助手をしている僕は,ここ数日,学会に出す論文『歯科材料の分析』の作成に追われていて,毎日3~4時間の睡眠で過ごしていた。睡眠不足も5日目ともなると,さすがに体がついて行かず,今夜は,風呂にも入らずベッドに倒れこんでいたところだった。
「なんだよ,こんな時間に…」
僕はまだ半分しか覚醒していない意識の中でつぶやき,少々腹立たしさを感じながら,電話を取った。
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