連載 読みきり短編小説 手をつないで歩こう・7
里の秋
渡辺 真琴
pp.870-875
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100332
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まずは,僕のことから話そう。
僕は,山間の小さな村で働いている。そこは,人口約8000人,高齢化率25.6%,年間出生約50人ほどの本当に小さな村で,僕はそこにたった2人しかいない保健師の1人なんだ。
僕の勤務先,つまり保健福祉センターは,昨年できたばかりの新しい建物だ。その斬新なデザイン――完全バリアフリーな今どきの建物なのに,見た目は巨大な山小屋風――は周囲の風景によく馴染む。そして,その大きさは,おそらく村の人口の4分の1は格納できるのではないかと思えるほどで,建物の一番東側にある事務室から一番西側にあるロッカールームまでは,距離にして200メートル程もある。
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