特集 看護研究の立案からパソコンによるデータ処理までの実際
さあ,みんなで「理論」を楽しもう!—看護研究の理論的枠組み
野島 良子
1
1徳島大学開放実践センター
pp.15-23
発行日 1989年1月25日
Published Date 1989/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908615
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科学の分野を,ノーマルサイエンスとプソイドサイエンスに分けて呼ぶことがあります.本当の科学である分野としての正常科学と,それに対応する分野としての偽科学です.正常科学は科学の本道であり,自然科学がその代表だといえますが,社会科学は科学と呼ばれているけれども,本当は科学ではない.本当の科学にはなりきれないのに科学だ,科学だ,といっているエセ科学だというわけです.非常に大雑把にいえば,ある現象を解明しようとする時に,ノーマルサイエンスのほうは,〔pならば,qである〕という形で条件を整理していって,その現象の原因を説明していくことができる.ところが社会科学のほうはそれができない.一定の条件を与えれば,結果は必ずそうなる,誰がやっても条件や手順さえ間違わなければ,必ずそうなるとは言い切れないところに特徴がある.
また,ノーマルサイエンスのほうではその成果が整理体系化されている.さきほどの秋吉先生の言葉を借りますと,それぞれの分野ですでに「総説をなしている」.ところが看護は,自ら「科学」だと言っているけれども,未だ総説をなすほどの知識の蓄積はもっていない.「総説をなしつつある」,もしくは「総説をなしつつありたい」と切望している段階だといえます.科学でありうるとしても,それはプソイドサイエンスのカテゴリーに入れられるところの社会科学であるということを踏まえたうえで,概念枠組みと研究の関係について考えてみようと思います.
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