看護人間学のための論理療法入門・14
実践編の5 不安
伊藤 順康
1
1東京理科大学
pp.620-623
発行日 1988年10月25日
Published Date 1988/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663908558
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不安と恐怖の自己強化
子供っぽい恐怖をかたくなに持ち続けている例としては,ボーレングラッド夫人のケースがある.子供の時,彼女は乱暴な父親に逆らうこともなく服従していた.彼はほんの少しでも自分の権威に従わないことがある時,きわめて厳しく彼女を罰した.彼女は,自分が人から優しく扱われることなど望むべくもないと考えて,のちに同じように非道な男と結婚し,10年ほど生活をともにした.それは,その男が精神病を罹って病院におくられるまで続いた.
子供時代および最初の結婚生活を通じて,彼女はまことに恐ろしい環境にあった.しかし,ボーレングラッド氏と2度目の結婚をしてからはそうではなかった.ボーレングラッド氏は,2人といないような柔和な素適な伴侶だったからだ.それにもかかわらず,彼女は神経症の徴候を自ら感じ,ひどい恐慌状態でエリス博士のところへ面接にやってきた.
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