断章・白い時間の中で・4
共同で病に立ち向かう第一歩
日下 隼人
1
1武蔵野赤十字病院小児科
pp.655-659
発行日 1981年10月25日
Published Date 1981/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907592
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解剖を依頼するとき,親に‘つらい気持らはよくわかりますが,医学の進歩のためぜひご協力ください’などと言ったりする.自分でもそれらしいことを言っているような気もするし,一方で余り言ってこなかったような気もするくらい,耳慣れた言葉だ.
だが,たまたまほかの人がそう言うのを聞くはめになって,そう言われて黙ってうつむいている親を見ながら,急に私は‘気持ちなんかわかるはずがない’と思い,初めてその言葉の残酷さにがく然とした.子供を亡くした母親が,その子供の死後ずいぶん経ってから私を訪ねてきて,‘主人と話してもどうしてもすれ違ってしまうんです.まだ先生と話したほうが通じるんじゃないかと思って’というようなことを言うことが少なくない.
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