ルポルタージュ 女と靴下・10
海へ—女性艇長(スキッパー)・小林則子さんの記録
鈴木 俊作
pp.255-260
発行日 1979年4月25日
Published Date 1979/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907331
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‘海は,吹き続ける風に目を覚まされた怪物のように動き,うねりは,踊るように,おびやかすようにやってくる.艇のすぐ後に深い谷がきざまれ,同時に急斜面の立ちあがった波が,その深い谷をへだててこちらに迫ってくる.波の谷が視界から消えると,斜面がかぶさるようにすぐ後で立ちあがり,崩れてコックピットにかぶさってくる.と思う瞬間,艇尾がふわっと持ち上がり,コックピットの両側を真白な泡が盛り上がってすぎてゆく.そのとき,艇は,デッキよりも高くなった白波の中に埋まりそうにしてやっと浮いている.タイミングが狂えば,バッサリと,コックピットと船内に青波がうち込んできそうだ’
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