扉
虚実のはざま
松岡 健三
1
1愛媛大学脳神経外科
pp.117-118
発行日 1982年2月10日
Published Date 1982/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201461
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一昨年9月,埼玉県所沢市で起こった富士見病院事件は,わが国の医療荒廃の象徴とみなされ,時の厚生大臣が辞任したり,知事による医療機関の強制査察がすんなり認められたり,医療110番が開設されるなど,単に産婦人科のみならず,医療界全体にはかり知れない影響を与えた事件であった.
「健康なのに開腹手術」「デタラメ手術」「無免許経営者が診断,次々子宮などを摘出さすでたらめ診療」「被害者数百人か?」「恨み残して自殺も」.これらが当時の新聞の見出しに躍った字句であった.事件の内容は,周知のように,富士見産婦人科病院の非医師の理事長である北野早苗が,収益をあげるために,自ら超音波断層診断装置(これをMEといっている)を駆使して,健康な患者に手術の必要があると半ば脅迫的に説得し,入院させた上,女医である彼の妻の院長はじめ勤務医たちも,唯々諾々と理事長に従って,多数の子宮や卵巣の剔出術を行った病院ぐるみの犯罪という,まことに猟奇的な事件であった.
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