看護学は学として成り立ちうるか
Ⅶ.くすりと薬学の周辺から
品川 泰子
1
1京都大学医学部生理学教室
pp.619-626
発行日 1975年10月25日
Published Date 1975/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906926
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理論の学と応用の技術
医学が学でないのと同様に,薬学も学でないといえよう,看護学もまた同じであろうと思う.薬学という名称は,薬を中心にした諸学に対する総称であり,化学や物理学や薬理学その他の多くの基礎科学を応用する研究分野に対する名称である.すなわち応用の学であって体系的学ではない.これらの応用の研究分野においては,必ず理論と実験がある.理論が完全であればいちいち実験を行う必要がないのであろうが,現実の物質を完全に記述できる理論は無いといってよかろう.もちろん‘完全な理論’とよばれる理論はあるが,それは物質を理想化した系を対象としている.
ユークリッド幾何学は,細長い物質を理想化して‘長さ’のみがあって‘太さ’のない‘線’という概念を扱っている,細長い物質を‘線’に関する理論で,つまり,‘近似的’に記述せざるを得ないところから実験が必要になるのだともいえよう.
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