扉
「良医」
神野 哲夫
1
1名古屋保健衛生大学脳神経外科
pp.921-922
発行日 1979年10月10日
Published Date 1979/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201046
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最近,身の程も弁えず,学生の講義とやらに時間をとられる事が多い.それだけ忙しくなるが,新設大学なので,教育の方法にも随分と従来のものと異なる事があり楽しい.ただ現代流と言うか,国試対策のような授業が多くなるのは寂しい.その寂しさを紛らわすため,正規の授業外で,ふと学生に尋ねる.「いい医者って何んだい?」「良医の条件とは何だろう?」,多くの学生が第一に知力(学力,医学的知識,つまり良く勉強する事),第二に体力が必要とまでは躊躇なく答える.そこで重ねて問う「知力,体力のみでは良い医師にはなれないのではないか?何か第三のαが必要なのではないか?」.するとその第三のαとは,誠実,献身,人格,親切,人徳……と実に千差万別の答えが返ってくる.
いろいろ答えがあるのが当然で,私自身も未だ答えを得ていない.誠実,親切,人格等,どれもが必要であると思う反面,何かもう一つ足りない気がしてならない.つまり絶対条件ではないように思われる.では何かと尋ねられても困るが,私自身の現時点の答えは,教祖的性格,つまりカリマス的性格が大切かもしれないというところであろうか.日本でも,いくつかある新興宗教の教祖の方々に医学的知識と体力を与えたら,すばらしい臨床医になられるであろうと思えてならない.いずれにせよ,この第三の因子αが,一人の脳神経外科医をして,どのような脳神経外科医であらしめるかという事を決定していると思える.
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