特集 昭和38年度看護教育研究会夏期講習会
看護教育制度にのぞむもの
看護の再検討—制度の基礎となるもの
橋本 寛敏
1
1聖ルカ国際病院
pp.18-22
発行日 1964年1月1日
Published Date 1964/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905225
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看護とは
看護制度について論じ,あるいは看護婦を養成する看護教育制度について論ずるにも,まず考えをまとめなければならないのは,「看護とはどんな仕事をすることであるか」という問題である。わが国では,従来白衣と白帽を身につけるいわゆる看護婦が現われてから85年余になるが,姿は文明国の看護婦と同じだが,その業務内容は必ずしもそうでない。それは看護婦自身が自分の本務は何であるかを真剣に考えたことがないからである。漠然と医療にたずさわる女として,医療の主動的立場にある医師に操縦されるままに,なんら自主性を持たずに働き続けてきたのである。外国で看護は専門職業であるといったので,そのまねをしたが,実際は職業的の独立性はなく,医師の補助者にすぎない。もともと,100年前に,ナイチンゲールが看護を一つの専門職として打ちたてたときには,医師の求めに応じて立ち上がったのではなく,患者が悲境にあるのを見るに見かねて,自主的にこの職業を創めたのであった。それは患者の衣食住について生活の援助と世話をし,それをコントロールして,医療の効果があがるような心身の状態をつくり出すことに全力を注ぐことにあった。科学を無視する尼僧,無知な下婢と違って,女性の教養を生かし,医学を学び,それに則って病態生理をもつ患者の生活の援助,世話,指導,教育を企てたのであった。
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