巻頭言
看護教育における高度な教養と識見
海後 宗臣
1
1東京大学
pp.1
発行日 1963年7月1日
Published Date 1963/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904397
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わが国は教育の水準が高いことにおいて各国からその特質が認められている。実際に多数の青少年が学校へ進学しているという点においては,世界で第2位であるということができるであろう。学校には幼稚園から大学まで体系ができているが,その中で一般教育を施す学校と専門教育のための学校とがある。しかし専門教育を施す教育機関の中において専門職のための特殊な教育を施す学校ができている。これは近代学校の教育を展開している先進国において,学校教育を拡充するにつれてこうした専門職のための学校が分化して成立してきたのである。
専門職のための学校教育を割合に古い時代から分化させてきたのは,法律学,医学,神学を修めるための高等教育機関であった。これらは司法官,弁護士,医師,牧師を養成する学校であって,世間ではこれらを専門職として一般職業と区別したのである。それはこれらの専門職が社会においてきわめて重要な役割を果たしているために,高度な学識と技術とを必要としているので,だれでもこの職につくという性質のものではあり得ないとした。いわば社会における人間のあり方の中心の柱を支えているようなもので,この専門職が堅実でないとその社会の人びとは幸福であることができない,そうした特殊な職分である。そのために最高水準の教育をうけ,社会的にも尊敬され,待遇も特に考慮されているのである。
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