編集デスク・27
この1億
長谷川 泉
pp.17
発行日 1963年5月1日
Published Date 1963/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904370
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「出せ1億の底力」の1億は,戦争の暗い谷間の時代における戦争遂行のためのかけ声であったが,平和な現在においては1億は別の意味で深い意味を持つ。それは人間ひとりの価値に関係づけて1億円の意味でクローズ・アップされてくる。
初任級が1万5千円かそこいらであっても,年々昇級やベース・アップはあるし,ボーナスも加算される。そうすると,人間ひとりが生涯にかせぎ出す金額というものは,大変な天交学的数字になる。もちろん,その数字は退職金も入れて考えるのだし,また複利計算をしてのうえである。一方人をやとう側の立場からいえば,そのような給与を支払った上,机も椅子もロッカーもといった具合にいろいろの設備費や福利施設も必要となる。その上,人間は機械と違ってあらゆる可能性を持っているのだから,現在のようなインフレの時代には,一生涯の人間の価値を金額に換算してみるならば,〆めておそらく1億近い巨額になるであろう。
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