編集デスク・9
ものを見て記録する心
長谷川 泉
pp.346
発行日 1961年7月1日
Published Date 1961/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904055
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自然科学的なものの見方は即物的である。その対象は自然に存在するものであり,物にしても理法にしても,それにとりくむ人の存在以前からあつたものである。もしその物の本質や理法の妙諦が把握されないとするならば,それはその真実の機構が蔽いかくされたり発見されなかつたためであるに過ぎない。
林檎の落ちるのを見て万有引力の法則を発見したのはニュートンの功績であった。しかし万有引力の法則は,落下する林檎にそそがれたニュートンの凝視以前にも厳然と存在する真理であった。原子力は,20世紀を待たなくても存在し得た。ただ20世紀以前の人には,その驚異的なエネルギーが現実のものとして体験されなかっただけである。
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