特集 看護教育と代替/補完療法―臨床・教育でどう実践されているか
ささやかな希望の時間の記憶
神馬 亥佐雄
pp.680-684
発行日 1999年8月25日
Published Date 1999/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903845
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はじめに
乳がんを手術して退院し,その6か月あと卵巣がんで再入院,約9か月の闘病後1996年3月に亡くなった妻を回想して,1年のちに私は次のような一文を書いています.「(乳がん手術後)退院してからは,わが家のすべてががんを中心に動きだしたといえます.日の出とともにはじまる瞑想の時間,玄米菜食,しょうがシップや里芋パスタによる民間療法,ワークショップへの積極的な参加など,できることはすべてやったという気がしないでもありません」
結果としては絶望の淵に沈められたとはいえ,乳がん退院後の6か月は,笑いと対話に溢れた実に希望に満ちた月日であったのです.今も彼女の書棚には,A・ワイルの『人はなぜ治るのか』,B・モイヤーズの『こころと治癒力』,H・エリオットの『がんのセルフヒーリング』,サイモントン夫妻の『がんのセルフ・コントロール』,C・ドストールの『がんに救われた男の物話』などと並んで,彼女自身が整理した「がん・自然治癒への道」「自然とからだ」と背書きされた資料ファイルがあり,彼女が当時何に希望を見出そうとしていたのか,その心の中を雄弁に物語っているような気がするのです.
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