臨床薬理学 薬物療法の考え方・6
薬物相互作用の考え方(2)
中野 重行
1
Shigeyuki NAKANO
1
1愛媛大学医学部・薬理学
pp.1235-1242
発行日 1981年7月10日
Published Date 1981/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217260
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薬物療法においては,2種類以上の薬物が同時に併用されることが多い.このとき,併用された薬物が他の薬物の作用を増強したり,逆に減弱することが起こりうる.このような現象を薬物相互作用(drug interaction)と称している.薬物相互作用は,その結果が出血(抗凝血薬の作用増強の場合)や低血糖症状(経口糖尿病薬の作用増強の場合)など臨床的に明らかに認めやすい症状として出現する場合には,発見してそれに対する処置をすみやかに行いうる.しかし,その結果が臨床的に認めがたい症状の場合には,見すごされることも多く,薬物療法の効果が不十分になったり,有害作用の出現につながることにもなりかねない.
したがって,多剤併用療法が避けがたい場合には,薬物相互作用に関する知識を十分にもっていることが,rational drug therapyを行うために必須の要件となる.しかし,薬物相互作用の例は,枚挙にいとまのないほど多く,これらのすべてを記憶することは,むしろ不可能に近い.そこで,薬物相互作用の発現メカニズムを十分に理解することにより,どのような場合に薬物相互作用の可能性があるかを知り,十分な臨床的経過観察を行い,その所見に適切な解釈を与えうるようにしておくことが大切であろう.本稿の主旨も,個々の薬物相互作用の例をあげることよりも,その発現メカニズムの理解を容易にすることにある.
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