特集 学生の声を聴く
看護学生とどうかかわるか―3つの成人教育論の視点から
前川 幸子
1
1前:三井記念病院高等看護学院
pp.194-199
発行日 1998年3月25日
Published Date 1998/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901795
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はじめに
看護学生について,「大人の部分を感じるときもあるけれど,やはり依存的」「昔に比べると幼ない感じ」「指示をするまで行動しない」という話を教員からよく聞く.またそのような学生たちと「一体どのようにかかわればよいのか戸惑うことが多い」という教員の悩みも耳にする.そこで成人教育理論の観点から看護学生を捉え直し,成人教育を基盤にした学生へのかかわりについて考えてみたい.
子どもの教育論をペダゴジー(pedagogy),成人の教育論をアンドラゴジー(andragogy)と呼ぶ.両者の区分は基本的には教育の対象の特徴である生理学的,社会文化的,心理学的な相違,さらにおかれている状況の違いにある.他方,教育の本質は普遍であり両者を区分すること自体に異論を唱える立場もあるが,教育方法やかかわりにおいて学習者の特徴を生かすことの重要性から,ここではこの概念を手掛かりとしたい.なお,Meyer, S. L. によるペダゴジーとアンドラゴジーの比較(表)は,子どもが未熟に表現されていることや子どもと成人の区分が不明確であることが課題として残るが,両者を構造的に対比させたものとして参考までに紹介したい.また,ここで述べる成人教育とは,成人を対象にした教育(education of adults)ではなく,成人性(adulthood),成熟(maturity)をめざす成人教育(andragogy)を意味するものである.
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