連載 「進学コース」教育の意味・4
青年期の発達課題と進学コース
榛葉 由枝
1
1天竜すずかけ病院看護部
pp.40-43
発行日 1998年1月25日
Published Date 1998/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901764
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国立療養所東京病院附属看護学院というところ
入学式の日,生まれて初めてラッシュアワーの東京の電車に乗った.おびただしい人波が,物凄い速さで流れていく様子に圧倒された.電車が止まる度に,人混みの間から駅の名前を確かめながら,やっとの思いで目的地についた時は,すっかり気おくれしていた.15分ほど歩いたところに,昭和6年に建築されたという木造の校舎が,武蔵野の面影を残す雑木林の中に埋まるように立っていた.建物の中は薄暗く,昼間でも電灯がついていた.一歩足を踏みいれると,床を拭く油の匂いが鼻を突いた.2階建ての校舎の1階が寮であった.全国各地から集まった,見ず知らずの8人が同室者になった.誰もが准看護婦としての社会経験を通して,はっきりした目的と問題意識をもっているようにみえた.夜を徹して准看護婦制度の問題点などをよく議論した.私はそこに加わっていながらも,いつも心のどこかに不安を感じていた.相変わらず,「自分が何をしたいのか」がつかめていなかったからだ.しかし表向きはそれを気づかれまいとして,私の常套手段である「抑圧や合理化」の防衛機制を働かせて,環境への適応を試みていた.
入学から3か月ほど経過したとき,看護生理学のテストがあった.結果は87点だった.大いに満足してクラスの平均を尋ねたところ94点だった.あらためてクラスメートの熱意に驚かされた.
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