Scramble Zone
フィリピンの高齢者と住まい―高齢者の幸せについての一考察
片岡 万里
1
1神戸大学医学部保健学科
pp.458-461
発行日 1997年6月25日
Published Date 1997/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901633
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はじめに
1996年の10月21~27日,私は第3回国際QOL学会に参加するためにマニラ市に行った.このフィリピン行きは,かねてから行なっているハンセン病療養者に関する調査結果を発表1)することの他に,老人看護学を担当する立場から,わが国ではあまり知られていない,フィリピンの高齢者の生活の様子を知ることも目的であった.それは,以下のような理由からである.
わが国では,かつて厳然と存在していたが今日では名実ともに死語になりつつある「長幼の序」がもっていたよい側面,すなわち高齢者を尊重する意識が社会のいろいろな部分で薄らいでいる.また,高齢者は必ずしもみな長寿を享受しておらず,家族に自分の存在を気遣って,独居や施設を生活の場に選択している場合が少なくない.このような状況に至った背景には,わが国経済の高度成長に伴う生産性の尊重や合理主義の尊重といった,価値観の変化が影響しているように思う.
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