特別記事
診療報酬改定の要点―医療の動向をとらえ,看護教育にいかすために
野村 陽子
1
1厚生省保険局医療課
pp.664-670
発行日 1996年8月25日
Published Date 1996/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901434
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はじめに
診療報酬の改定は,改定前年に行われる医療経済実態調査に基づき,また物価や賃金の動向等を勘案して,通常2年に1回行われている.診療報酬は医療機関の主な収入源となっており,改定は医療機関の経営に大きな影響を与えている.一方,改定によって医療費全体が膨らみ,赤字である保険財源や医療費として投入されている税金,そして患者の自己負担額にも跳ね返り,社会全体に多大な影響を及ぼしている.診療報酬は,医療サービスの経済的なしくみであるが,医療の方向を誘導する役割を持っていることから,医療そのものへの影響も見逃すことのできない側面である.
平成8(1996)年度の診療報酬改定をみてみると,近年の物価・賃金の指標が鎮静化していたこと,そして医業経営も病院は改善の傾向が見られたこと等により,診療報酬の改定は低率とならざるを得ない状況であった.このようなことから,今年度の改定幅(値上げ率)は3.4%となり,薬価基準が下げられているので,実質0.8%という改定となった.しかし,改定幅が少なかったわりには新規に点数(価格)をつけた項目も多く,かなりきめ細かな改定が行われたと思われる.しかし,“看護”については看護の改定といわれた平成4(1992)年度や6(1994)年度のような大きな動きはなく,現状の改善に留まっている.
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