調査・研究
新卒看護者の精神的不健康と卒前の個人要因との関連
長尾 節子
1
,
荒川 真知子
2
,
影山 隆之
3
1立川市立看護専門学校
2東京警察病院看護専門学校
3国立環境研究所
pp.485-490
発行日 1996年6月25日
Published Date 1996/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901394
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
看護職をはじめとする対人サービス職の精神健康の問題は,1970年代に米国において提起され始めた1-3).その後日本でも,看護者は他職種に比べ心身が不調との自覚症状を訴えることが多く,精神的疲弊状態にあるとの報告が多数みられる4-8).特に,新卒者のリアリティショックとも呼ばれるように9),勤務年数が短いほど精神的不健康度が高いとの報告が多い5-8,10,11).ただし,勤務年数のもっとも長い群でも状態が悪い4),または経験年数とともに状態が二峰化する12)との報告もみられる.いずれにせよこのような精神的不調は,対人ケアを中心とした業務を遂行するために望ましくないし7),看護者の早期離職の一因となっている可能性もあるので12),総合的な対策が求められている.
このような看護者の精神的不健康の背景には,勤務条件などの職場環境要因4,5,7,8,10,11)や職場の対人関係4,7,8,11)に加えて,ストレスコーピングなどの個人的特性4,7,8,11)の関与が示唆されている.もしこれらの個人的要因が,看護職に就くより以前からの個人の特性として存在するならば,看護者となった後に著しい精神的不健康を呈する者を,たとえば看護学校の卒業前に予測することができるかもしれない.そうであれば,そのような要因をもつハイリスク者に対して卒前から予防的な対応をとることも,検討の余地があることになるだろう.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.