連載 人間と教育・7
諦めるなら見きりを
上田 薫
1
,
加藤 由美子
1前:都留文科大学
pp.484-485
発行日 1993年7月25日
Published Date 1993/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900605
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諦めてしまうのはよくないという常識のようなものがある.しかし,それは舌足らずのことで,とうていできそうにないことはだれだって諦めざるをえまい.いやむしろ,諦めることができなければ,人生は暗くつらいものになる.もちろん弱気ですぐ諦めるのは論外で,粘りに粘って初一念をつらぬくのはりっぱというほかないが,不可能とわかっていていつまでも諦めないのは,負け惜しみといわれてもしかたがない.あと悔やみはさらに悪かろう.となると,諦めをどう働かすか,どう生かすかは,まさに人生の大事といってもよいのである.
諦めはちょっと考えると,情とか意とかに強くかかわるように思えるけれど,根本はむしろどういう世界観,人間観をもっているかということに左右されるから,実はきわめて知的だということができるのである.それに,ことがらがよくわかっていないと,諦めてはいけないことまで諦めてしまう.その結果,人間の運命にまで影響することがあるから,諦めへの対処のしかたは重大なのである.
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